Tumblrの転載などについて。僕はTumblrの一使用者です。
根本的には技術的な解決が有効(むしろそれしかない)と考えている。これは一つの思考停止の形なのかもしれないのだが、一つの思考の端緒でもあると正当化される。であればboreal-kiss.comの方の言われていることが、技術的解決という意味で全くポジティブであると考えられる。Tumblrの直接的な転載を不能にする技術だろうから。ただ、その志向性において真正面から対決するような技術、それもより強力な対抗技術が現れたらお手上げになる。そしてそれは技術の話で端的にそうであるというだけ。僕はプログラムなど技術的なことは全くわからない門外漢なので、上記は現実性、実現性の伴わないただの理屈であるだろうけれど。ウェブに何かデータをあげるという行為それ自体が、その対象への絶対的なアクセス可能性の担保だとしたら、その可能性を現実的に相対的に下げていく方向にしか道はない。

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規範的な次元なら、リスクのコントロールというポイントが一つ。恐らく現在のウェブ使用者全員がウェブ過渡期の人間だろうけれど、その内で、ウェブの規範を内在的に規範化された人間、例えば他の道徳、倫理的な規範のように規範化された人間は皆無だろうと想像する。そこらで万引き強盗はしないけれど、画像転載はする、著作権を侵す、など。なるほど既存のモラルをウェブ活動でのそれに敷衍するという話はあるだろうが、どんなものであれリスクがほとんどない個々のモニターの前で、それを全ての成員に要求するのは、現実的ではないし困難事ですらあるのではないだろうか。これはつまり、モラルを要求するリスクと要求されるリスク共にそうだ、ということだが。ネット空間がもっと狭いものであれば、コントロールはあるいは成功するかもしれないし、実際そうだったかもしれない。翻って、より大きな規範としての法律がある。でもそれも直接的にウェブ技術に介入するものではない。ただ法は法として固有の次元で勿論強力に機能する。じゃあ法のあり方はウェブ営為におけるリスクをどれぐらい直接的にコントロールできるか?グレーゾーンという概念の発生は興味深い。

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それじゃあ、ウェブでは何をしてもいいのか、または、よそからネットにアクセスする誰かに規範を全く期待してはいけない、するべきでないのか、およそ規範には期待をかけるべきでないのか。ペシミスティックな極がある。あるいは、ウェブ技術開発のデザインに既存の規範がどれぐらい介入できるのか。ウェブに作品をアップすること、それら作品をウェブデータとして扱うこと。テクノロジーの倫理はそれら規範の問題と交錯する。ウェブ営為者におけるウェブ営為、その規範については技術との往還においてずっと考えられることになるだろう。これはコミュニケーションの可能性としてポジティブに提示しうる問題。

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tumblrに関しては、会員制になって、外部の人が見られないようになればいいというのも考えてみたけど、どうなんだろうか。

イラスト作者とtumblrユーザー間の論争 : ARTIFACT ―人工事実―

現実的にはこれもいいな、と思う。データの非拡散。規範の闘争(作品制作者の個々の事由、Tumblr使用者個々の事由)においては今のところ個々のやりとりで事態を解決することしかできないだろうし(個々の事態においても必ずしも解決できるとは限らないが)。

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僕は絵描きさんではないのですが、自身で例えば音源をウェブにアップするにあたって、もうこれはデータとしてどうなってもしょうがないだろう、と明るくあきらめている。極端に誰か他人にこれは自分のものですと盗用されてもやむなしと、まあこれはこれでどうなのかという話ではあるかも。言うなれば理念の問題だったりするが、共約、通約的には規範の話となる。僕がTumblrを使うのは、単純にデザインとかアイデアとかへの原始的な出会いを求めるような動機によるもので、それはある意味、怠惰なサーフィンともいえるのか。Tumblrの仕組みの半分は、他人の外部データクリップを自分の内部データクリップ(ダッシュボード)に流すことにある。人によってはそれが半分以上の意味を持ち、僕にいたってはほぼ完全に他の方のアカウントに依存している有様、なので、責任の面で言えば、僕は性質の悪い人であるということです。TumblrフリーライダーTumblrは何が楽しいか。他人の脳内とか夢とかを見てるようで、気持ち悪かったり、快楽だったり、といったところ。Tumblrの動作原理は、外部データクリップを回す→内部のそれが回る→更に外部が回る→更に内部が、という感じ。