(シュリー+ファイン)マン

物理法則はいかにして発見されたか (岩波現代文庫―学術)

物理法則はいかにして発見されたか (岩波現代文庫―学術)

40年前に出版された本とのこと、科学の日進月歩は言うに及ばないだろうとは想像しうる。そこは最新の版、追記にその後の物理学の動向をフォローしやすいように参考文献の案内があり、ありがたい。

何にせよ科学を役立てるためには当て推量もやむをえないのです。実験の結果をただ単に記述するだけでは仕方がないので、私たちは手がけた範囲を超えて法則を提起しなければなりません。科学はそのために不確かなものになりますけれども、それで結構です。

泥臭いのは、世界の動きを振る舞いを法則化すること、直観を忘れないこと、検証実験にきちんと耳を傾けつつ、なおかつ想像の力を失わないこと、これらのバランスのとりかた。ファインマンはユーモラスに科学者の粋みたいなものを見せてくれているようで、それは洗練なんてイメージからは程遠いように思う。とてもとても泥臭い。
内容はどのポイントも面白い。量子論、重力、保存の法則、法則の対称性、数学と物理の関係など。その上で彼のいうところの「理論の階層性」についてのはなしがぐっと来た。それは、原子の極微の世界の理論、分子の世界の理論、結晶の世界、個体の世界などそれぞれ固有の領域において有効である理論を如何に結びつけてみるか、貫き合わせてみるかということ。自然科学だけの話ではなく、例えば美の観念、神の観念、社会の、歴史の観念などもそう、それらに相対する人間の心もそうで、その心と対応的である脳機序、その分子運動、電子運動などがあって、たくさんのレベル、階層があるし、理論がある。それらをただただ縦に統一することは可能かどうか、というよりは、それら巨大な全体が全体として問題であるし、そこにおいて内在的な絶え間ない関連付けの努力がある、ということ。謙虚さと誠実さを感じる。