催眠誘眠効果。
中学の時の記憶。生物の授業で、教師が内容説明のため、黒板に図を描きだした。授業の中身は覚えていない。覚えているのは、その教師がある一点で執拗にチョークを反復させたこと。彼は、丁寧に図示する必要が全くないと思われる細部を、反復的に細かく細かくなぞるように描いた。その途端僕はくらくら強烈な眠気に襲われて、4,5度居眠りをした。ハッと目を覚ますとまだ先生はその細部をなぞっている、というのを4,5度繰り返したわけだ。その間時間にしてどれぐらいだったのか正確な事はわからない。とても長い時間だったような気もする。彼の行為は異常であったように今にしてはっきり思うが、過剰な意味づけだろうか。生徒は誰もその行為の意味について指摘や問いかけをしなかった。集団催眠だったのか、なんて思う。その教師にそういう意図があったのかは、今となっては確認の仕様がない。言えば、ただ単に僕がその時眠たかっただけなのかもしれない話だ。それを勝手に因果づけているという話。
でも、例えば、職人さんの何らかの細かい職人的反復作業を見ていてもそういうことはないだろう。そこには明確な意味、意図があると想定される。その細かい意味についてはわかるべくもないのだけど。被催眠の条件としては、1.意味のまったく分からない、2.反復的行為に、3.集中してしまう、ということが必要ぽい。ここに、4.もともと眠気がある、が加わるとバッチリじゃなかろうか。それを催眠と呼ぶかどうかとなると、最後の条件はいらないか。
あの教師にはやっぱりそういう意図があったのじゃないだろうか。そう考えると不気味だけど面白い。授業という対人形式における実験。