400年生きた貝の気持ちを考えてごらん、と、どこかのおじいさん(僕にはもうおじいさんがいません)が言うので、考えた。貝は400年生きていたが、開けられて調べられたがゆえ、死んだ、という話だ。享年400歳。400年どんな気分で何をしていたのだろう。多分貝は、400年間、貝の内側にびっしり絵を描いていたと思う。ミケランジェロも真っ青。というかひょっとしたらミケランジェロの生まれ変わりかも。ググると年数は合わないようだが。それで、ある日急にごりごり物凄い力によって蓋を開けられたわけだ。あれ、ちょ、ちょっと、そこ開くの?と貝の中身は素朴に思った。キャンバス的なもの、天井画の天井のようなものだと400年間思っていたのに。開けられなかったら、開けられるまでずっとそう思っていたはず。しかし貝はいつかは自分死ぬだろうな、とうっすら予感していたので、完全に蓋をこじ開けられる前に、描いていた絵を大急ぎで拭き取って、画具やらを片付けようとしたら、それがよくなくて、経過は想像できないけど、まあ自殺みたいな形になったので、開けた人は自分を責めなくていいよ。
それで、この場合、この貝は、チラシの裏というか貝の内側に絵を描いていたということで、己の領分を知った謙虚なやつなのか、それとも、凡百の貝に漏れない井の中の貝に過ぎなかったのかどうか、という話を脳内おじいさんと脳内孫が話しているのを、第3者として盗み聞きしたという設定のお話をすることになったわけ。