070818 魁!音楽番付2007

 
ギャルの囲い、圧迫の小さなステージで新曲披露。ちょっと異様なほどの設定。
Bメロでトップノート、ファルセット巧みに使い分け。
アレンジは生演奏ぽく、大げさな仕掛けは無い。
谷村有美が作詞曲とのこと。女の人の女性的なもの、母性的なものの点で
何となくイメージが重なるような気もする。谷村有美に関しては
ほとんど知らないのだけれど。

                                                            • -

松浦亜弥は耳がいい。物凄いスピードで自分の声にレスポンスしていく。
モニタリングの技術だし、声帯と聴覚神経のミリ秒単位の体内連動なのだろう。
同時にレスポンスの対象はそれだけじゃない。自分の身体から周りへ、背景へ。
そして、その端っこでは電波の向こうの誰かへ。
緊張する体を修正したり、そんな修正の様を照れでごまかしたり、
観客へ直接的に合図したり、それでも思わず照れが過剰に出てしまったり。
コミュニケーションする、コミュニカティブな松浦亜弥
その身体性は歴史性なのだと思う。
それは彼女の自我の運動をある程度知っている者だけが与る特権だろうか。
彼女の自我の破れいく様をおぼろげながらも感受してきたものたちだけの?
きっとそうじゃないだろう。
彼女がどんなことを考えて唄っているのか、
彼女すらも知らない、わからないかもしれない。
それを誰が規定するのか。
 
事件としての、経験としてのあのアイドル「あやや」はまったくどこにもいかない。
それは唄う彼女の柔らかいイメージに今もなお重なって塗りこめられて透けて映る。
そして彼女はとても素直にそれを受け入れ、映し出し、反復しているように見える。
成熟していく歴史的身体の松浦亜弥。コミュニケーションの過剰の。
それは同時に私たち見るものの鏡だ。