カントリーマアムを返せ!と梨華ちゃんの顔がみるみる近づいてくる。紅潮したほっぺたをよそに、鼻息をぜーんぶ吸い込みたい。思想・ガス循環によるエコロジー。きりきり怒りの神経を振りまく梨華ちゃんは依然とフランツ王子にしか見えないが、それは夏以来ずっとのことなのだった。フランツ梨華ちゃん。いや、王子はずっと潜在的梨華ちゃんの中にいたのではないだろうか、というと思い当たる節もある。何か正しさを追い求める人よ。他の誰にも見えないものを君ははっきり見る。その正しさをひとかけでいいから欲しい!窮乏する世界に、そう、フランツは受肉した!
いやいやまって俺fujiyaじゃないから、それに俺これから散髪だから。代りといっては何ですが、ハッピーターンあげるよ、ハッピー!といつぞやのチャーミーみたく自爆する。少しもハッピーでない。チャーミーはそれでも必ず誰かが笑ってくれるからいいけれど、こっちは誰もクスリともしないよ。届けテレパシー、とんがりコーンを指にはめて遊ぶ柴ちゃんにヘルプの流し目を送ってみても、それ面白いよウフフ、とおざなりもはなはだしい。泥沼ってきっとこういうことだ。そうしてついに、梨華ちゃんの険しい視線は緩むきっかけを失った。あなたが、と彼女はまっすぐこちらを見る。あなたがfujiyaじゃないのはわかったわ。全部は信じないけどね。わかった、じゃあ、回収される前に買い占めてきてよカントリーマアム。さっと立ち上がりきびすを返す、梨華ちゃんの正しいお尻のラインをぼんやり見送る。残酷なまでに俊敏な立ち居振る舞いのキレに、麗しの秋山レイカ嬢をダブらせた。正しくあることの美しさと、狂気にあることの美しさは、その純粋さにおいて似ているように思う。美しい君。君にはきっと少しビターなココア味のカントリーマアムが似合うだろう。