かめいのかはんしん#2

音楽は手段でしょうか
手段でしかありえないでしょうか
 
これはエゴイズムの断末魔で
側頭部がキシキシ痛みます。
 
年末の高揚は持ち越されず
川底のような微流動の生活が帰ってきました。
生暖かい布団の中のような生活です。
 
パッと作った鼻唄、ふとこぼれ出た。
僕はさゆみんにそれを聞かれてやしないかと思って
ヒヤッとしたのですけれども
別に何ということもなく彼女は
相変わらずのお姫様志願で
「おひめさまになるほーほー」といったような
書物を寝転びながら繰っている。
僕の識字率を極端に下げる一冊です。
 
そこで僕は
王子様なんて来ない
王子様なんて来ない
って今度ははっきりと
唄ってやりましたよ
 
さゆみん
チロリと僕の顔をみやった。
心持ムッとした表情の残像を残したが
別段何も言わないので
僕はちょっと心配になりソワソワしました。
 
「王子様は案外来るかもしれない、来年あたり」
「ふ〜ん、そお?」
「そう、そうだよ!イワシの頭も信心からって言うじゃん」
イワシ?別に合わせることないよ、わたしに」
「合わせてるとかじゃないよ」
「・・・ふ〜ん」
「・・・」
「信じるぅ〜ことに〜するぅわぁ〜」
「キタ!」
「赤い〜フリィ〜ジィアアアアァ〜」
 
僕は虚空を縮減して最初の問いに戻る。
 
音楽は手段でしょうか
手段でしかありえないでしょうか
 
サユージアはそんな問いを決定的に無効にしてしまう
力を秘めた代物で僕はただ打ちのめされるのです。
 

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そんなさゆみんを抱きしめ忘れたと
飛びつこうなんて思ったら、その一瞬前
トテトテと本を開いたままどこかへ行ってしまった。
何気なく見るページには
「王子様が現れるまではみだりに他の男子と接触しないこと」
 
さゆみんは日本最後のお姫様になるよ。

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近頃は音楽を聴くのがつらいこともあります。
じゃあ聴くなよ!