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この僕を精一杯 好きになっておくれ
そして今度の夏が来たら さっさと忘れておくれ
この僕を大切になんて 扱わないでほしい
君を大切な人だなんて 思わせないでほしい
そうさ君は素敵な女の子だよ
このまま仲良く年を取ろうだなんて思わないでおくれ
 
どっちを向いても約束事ばかりの毎日だ
ねえ いつまでも信用のおけない君と僕で居ようよ
一度燃えてしまったらもう 跡形もない
そんなものが僕も君も大好きだよ
そうさ君は素敵な女の子だよ
お尻の隙間でひらひら揺れてるどす黒い象の耳よ
 
健全なおしゃべりは君を醜くするだけだよ
黒ずんでもう口もきけない優しい心よ
月夜にきらめく鉄道レールの冷たさが大好きだ
道端に紙屑のように捨てられた寂しさ達よ
そうさ君は素敵な女の子だよ
決して幸せになんてなることなかれ
 
日の照りはじめた大通りで首を揃え
花のように咲き誇った大食漢ども
あいつらが毎日をこんなにも味気ないものにしたのは
びしょびしょになって腐り始めた電信柱よ
そうさ君は素敵な女の子だよ
ああ この人生何百倍にもちゃかしてやるがいい
 
さあ冬の暖かい布団からさっさと這い出して
春の湯舟の中で僕をしっかり抱きしめておくれ
6月の重たい空の下をブンブン飛び回り
そして焼け付く夏にさっさと死んでしまいなさい
そうさ君は素敵な女の子だよ
この僕を精一杯好きになっておくれ
この僕を精一杯好きになっておくれ
この僕を精一杯好きになっておくれ
 
「反復」友部正人