秘すれば花
その少女は自身の額について観念にまみれたのだった。ともすればあざといぐらいに露出されるそれについて、周囲はおろか遠方であれこれ騒ぐだけの野次馬ですらも(いや野次馬だからこそか)その意識の強度を高めていくのが、彼女には文字通り手に取るようにわかったのである。だが神の降りかたは実に気まぐれなもので、そんな神の気まぐれに誘われた彼女のふとした気まぐれは、前髪をおろしてみるという気まぐれ、ウィットとして此岸に発現したのだった。そしてその後の歴史は斯くの如しである。
彼女はそれでも時々その額を我々に覗かせてくれる。それは名残惜しさか彼女一流のサービスか、それとも。とまれ価値は相対的なもので、彼女の手には強力な、とても強力な武器が渡ることになったのである
「というお話をこしらえてみました」
「ちょ、ちょっといいですか」
「何ですか」
「神と髪をかけてますか」
「テヘテヘ」
「テヘテヘとか可愛くないよ」
「そうですか」
「全然可愛くな〜い!」